2020年8月5日発表の最新データを元に記事を執筆しています。
ふるさと納税による寄付を受け付けている自治体は日本全国で1787自治体あります。(2019年8月2日時点)しかし、ふるさと納税にどの程度力を入れているかは自治体によって異なり、魅力的な返礼品を用意している自治体とそうでない自治体があります。
また、2008年から始まったふるさと納税は度重なる制度変更により人気の自治体が大きく変化していったことも特徴の一つです。
今回は、ふるさと納税の寄付金の受け入れ額の推移を元に、人気の自治体を発表するとともに、それがどのように変化していったのか発表していきます。なお、本データは総務省が公表している資料を引用しています。
目次
ふるさと納税の受け入れ寄附金額の推移
まずはふるさと納税の受け入れ寄附金額と受け入れ件数の推移を見ていきましょう。

2008年から始まった2011年に東日本大震災の災害支援の一つの形として注目を浴び、その後2012年のふるさとチョイスOPEN、2014年のふるなび、さとふるOPENといった複数のふるさと納税サイトの開設によって世間一般への認知が広がっていきました。その後、2015年の制度改正により控除限度額が2倍になった後の返礼品競争の激化により一気に受け入れ寄附金額が増加していきました。
2019年には3割ルールの厳正化により受入金額は7年ぶりに減少に転じましたが、受け入れ件数は増加しており、世間一般的には更に浸透・定番化を続けているという状況で、今後もさらなる市場規模の拡大が予想されています。
ふるさと納税ガイドではふるさと納税の歴史を次の3つに分けて解説することができると考えています。
- 2008年-2010年 黎明期
- 2010年-2014年 成長期
- 2015年-2019年 発展期
それぞれの時期についてどのような自治体が受入金額が大きかったのかということを順に見ていきましょう。
ふるさと納税黎明期:政令指定都市にふるさと納税が集中【2008年-2010年】
2008年に始まったふるさと納税ですが、始まった当初は「返礼品」を用意していない自治体も数多く存在しました。また、ふるさと納税という言葉自体が世間一般に認知されておらず、高額所得者を中心に一部の人のみしか行っていませんでした。
また、ふるさと納税サイトも存在しなかったため、より良い返礼品を選ぶという行為やふるさと納税の手続きも難しい時代でした。
そのため、東京都の各自治体や地方の政令指定都市などが受入金額の上位を独占しており、地方の小さな自治体は全く寄付金が集まらない状態でした。
2008年:ふるさと納税受け入れ寄附金額TOP10
順位 | 自治体名 | 受け入れ寄附金額 |
第1位 | 東京都府中市 | 6億6194万9千円 |
第2位 | 広島県広島市 | 6億2914万8千円 |
第3位 | 北海道札幌市 | 3億9780万1千円 |
第4位 | 東京都杉並区 | 3億2871万2千円 |
第5位 | 東京都文京区 | 1億1841万3千円 |
第6位 | 兵庫県神戸市 | 1億1284万2千円 |
第7位 | 長野県飯山市 | 1億0993万4千円 |
第8位 | 大阪府大阪市 | 1億0866万6千円 |
第9位 | 神奈川県厚木市 | 1億0722万9千円 |
第10位 | 千葉県木更津市 | 1億0709万9千円 |
2009年:ふるさと納税受け入れ寄附金額TOP10
順位 | 昨年比較 | 自治体名 | 受け入れ寄附金額 |
第1位 | – | 東京都府中市 | 5億7766万4千円 |
第2位 | 1↑ | 北海道札幌市 | 5億1441万9千円 |
第3位 | 1↓ | 広島県広島市 | 1億9871万9千円 |
第4位 | New! | 岐阜県岐阜市 | 1億4842万2千円 |
第5位 | – | 東京都文京区 | 1億2846万9千円 |
第6位 | 2↑ | 大阪府大阪市 | 1億1256万9千円 |
第7位 | New! | 東京都足立区 | 1億0329万9千円 |
第8位 | New! | 佐賀県神埼市 | 1億0297万5千円 |
第9位 | New! | 福岡県大野城市 | 1億0168万6千円 |
第10位 | New! | 三重県四日市市 | 1億0001万5千円 |
2010年:ふるさと納税受け入れ寄附金額TOP10
順位 | 昨年比較 | 自治体名 | 受け入れ寄附金額 |
第1位 | New! | 東京都品川区 | 15億2245万8千円 |
第2位 | New! | 兵庫県神戸市 | 11億5670万1千円 |
第3位 | 2↓ | 東京都府中市 | 5億0223万4千円 |
第4位 | 2↑ | 大阪府大阪市 | 2億1427万2千円 |
第5位 | New! | 東京都三鷹市 | 2億1322万2千円 |
第6位 | New! | 東京都世田谷区 | 1億3031万8千円 |
第7位 | New! | 東京都目黒区 | 1億1961万7千円 |
第8位 | 3↓ | 東京都文京区 | 1億1848万8千円 |
第9位 | New! | 千葉県千葉市 | 1億1708万9千円 |
第10位 | 6d | 岐阜県岐阜市 | 1億0514万5千円 |
2010年は東京都の自治体が6個、政令指定都市が3個(神戸市、大阪市、千葉市)と、大きな自治体への寄附金額の集中が最も見られた年でした。
ふるさと納税成長期:義援金としてのふるさと納税や魅力的な返礼品が増える【2011年-2014年】
2011年には東日本大震災が起こり、東北地方を中心にその被害が連日大きく報道されました。ふるさと納税は被災地をサポートする仕組みとして注目を浴び、ふるさと納税の認知度が広がる最初のきっかけとなりました。(2011年:岩手県釜石市、福岡県相馬市など)
また2012年9月にはふるさと納税サイトの老舗「ふるさとチョイス」がオープンしました。また、2014年7月には「ふるなび」が、2014年10月には「さとふる」がそれぞれオープンしました。寄付する自治体を「返礼品で選ぶ」という文化が世間一般に徐々に浸透し始めたのもこの時期です。
2011年:ふるさと納税受け入れ寄附金額TOP10
順位 | 昨年比較 | 自治体名 | 受け入れ寄附金額 |
第1位 | New! | 岩手県釜石市 | 20億6406万1千円 |
第2位 | New! | 福島県相馬市 | 6億2777万3千円 |
第3位 | – | 東京都府中市 | 4億4357万7千円 |
第4位 | New! | 福岡県大野城市 | 3億0131万0千円 |
第5位 | New! | 北海道網走市 | 2億6831万7千円 |
第6位 | New! | 宮城県山元町 | 2億1666万4千円 |
第7位 | New! | 東京都調布市 | 1億6275万3千円 |
第8位 | – | 東京都文京区 | 1億3352万3千円 |
第9位 | New! | 東京都大田区 | 1億0416万8千円 |
第10位 | New! | 北海道札幌市 | 1億0033万0千円 |
2011年は東日本大震災の影響により岩手県釜石市が圧倒的な寄附金額を集めました。
2012年:ふるさと納税受け入れ寄附金額TOP10
順位 | 昨年比較 | 自治体名 | 受け入れ寄附金額 |
第1位 | 2↑ | 東京都府中市 | 4億2959万1千円 |
第2位 | New! | 東京都荒川区 | 3億1193万4千円 |
第3位 | New! | 愛知県名古屋市 | 2億8954万7千円 |
第4位 | 3↓ | 岩手県釜石市 | 2億1442万4千円 |
第5位 | New! | 東京都杉並区 | 1億7438万9千円 |
第6位 | New! | 千葉県流山市 | 1億7099万7千円 |
第7位 | New! | 福岡県宗像市 | 1億5725万2千円 |
第8位 | New! | 東京都葛飾区 | 1億5467万8千円 |
第9位 | 1↓ | 東京都文京区 | 1億5390万1千円 |
第10位 | New! | 岐阜県岐阜市 | 1億3151万5千円 |
2013年:ふるさと納税受け入れ寄附金額TOP10
順位 | 昨年比較 | 自治体名 | 受け入れ寄附金額 |
第1位 | New! | 東京都三鷹市 | 4億2978万9千円 |
第2位 | 1↓ | 東京都府中市 | 3億7569万5千円 |
第3位 | New! | 群馬県高崎市 | 3億1443万1千円 |
第4位 | 1↓ | 愛知県名古屋市 | 2億9379万8千円 |
第5位 | New! | 鳥取県米子市 | 2億7924万1千円 |
第6位 | New! | 長野県阿南町 | 2億6544万4千円 |
第7位 | New! | 佐賀県玄海町 | 2億4859万4千円 |
第8位 | New! | 宮崎県綾町 | 2億4732万8千円 |
第9位 | New! | 北海道上士幌町 | 2億4350万3千円 |
第10位 | New! | 大阪府大阪市 | 1億8793万1千円 |
2013年は鳥取県米子市や佐賀県玄海町など、2020年現在でも人気の返礼品を数多く出す自治体がランクインし始めました。2012年のふるさとチョイスOPEN以降、返礼品で自治体を選ぶ傾向が見始められた年であったことがわかります。
2014年:ふるさと納税受け入れ寄附金額TOP10
順位 | 昨年比較 | 自治体名 | 受け入れ寄附金額 |
第1位 | New! | 長崎県平戸市 | 14億6259万7千円 |
第2位 | 5↑ | 佐賀県玄海町 | 10億6663万0千円 |
第3位 | 6↑ | 北海道上士幌町 | 9億5716万9千円 |
第4位 | 4↑ | 宮崎県綾町 | 9億4396万8千円 |
第5位 | New! | 山形県天童市 | 7億8087万5千円 |
第6位 | New! | 島根県浜田市 | 7億2699万2千円 |
第7位 | New! | 長野県飯山市 | 6億2547万3千円 |
第8位 | New! | 佐賀県小城市 | 5億1196万2千円 |
第9位 | New! | 宮崎県都城市 | 4億9982万3千円 |
第10位 | 5↓ | 鳥取県米子市 | 4億7569万0千円 |
2014年はふるさと納税の大人気自治体の一つである宮崎県都城市がTOP10入りを果たした年です。宮崎県都城市はこの年から受入金額を増やし続け、累計受け入れ寄附金額で第3位となっています。
ふるさと納税発展期:返礼品競争が加熱しふるさと納税ブーム到来【2015年-2019年】
2015年の制度改正によりふるさと納税の控除限度額が2倍になったことを受け、ふるさと納税に対する世間の注目度が一気に増し、ふるさと納税ブームが巻き起こりました。ふるさと納税サイトの数もどんどんと増え、返礼品競争が加熱したのもこのタイミングです。
ふるさと納税の受入金額も大きく増加していく一方、ふるさと納税に力を入れている自治体とそうでない自治体の格差も広がっていき、返礼品に関する規制が検討されることとなりました。
2015年:ふるさと納税受け入れ寄附金額TOP10
順位 | 昨年比較 | 自治体名 | 受け入れ寄附金額 |
第1位 | 8↑ | 宮崎県都城市 | 42億3123万4千円 |
第2位 | New! | 静岡県焼津市 | 38億2558万2千円 |
第3位 | 2↑ | 山形県天童市 | 32億2784万4千円 |
第4位 | New! | 鹿児島県大崎町 | 27億1964万2千円 |
第5位 | New! | 岡山県備前市 | 27億1568万6千円 |
第6位 | New! | 長崎県佐世保市 | 26億4759万7千円 |
第7位 | 6↓ | 長崎県平戸市 | 25億9978万5千円 |
第8位 | New! | 長野県伊那市 | 25億8262万7千円 |
第9位 | New! | 佐賀県上峰町 | 21億2996万0千円 |
第10位 | New! | 島根県浜田市 | 20億9357万3千円 |
2015年は「干物」の返礼品が有名な静岡県焼津市、「うなぎ」の返礼品が有名な鹿児島県大崎町などがTOP10入りをしています。
2016年:ふるさと納税受け入れ寄附金額TOP10
順位 | 昨年比較 | 自治体名 | 受け入れ寄附金額 |
第1位 | – | 宮崎県都城市 | 73億3316万1千円 |
第2位 | New! | 長野県伊那市 | 72億0469万3千円 |
第3位 | 1↓ | 静岡県焼津市 | 51億2128万1千円 |
第4位 | New! | 宮崎県都農町 | 50億0869万5千円 |
第5位 | 4↑ | 佐賀県上峰町 | 45億7329万2千円 |
第6位 | New! | 熊本県熊本市 | 36億8631万0千円 |
第7位 | New! | 山形県米沢市 | 35億3099万3千円 |
第8位 | New! | 大阪府泉佐野市 | 34億8358万2千円 |
第9位 | 6↓ | 山形県天童市 | 33億5754万9千円 |
第10位 | New! | 北海道根室市 | 33億0743万4千円 |
2016年は大阪府泉佐野市がふるさと納税に力を入れだした年です。大阪府泉佐野市は2018年までのデータで累計受け入れ寄附金額が全国の自治体で第1位となりました。
2017年:ふるさと納税受け入れ寄附金額TOP10
順位 | 昨年比較 | 自治体名 | 受け入れ寄附金額 |
第1位 | 7↑ | 大阪府泉佐野市 | 135億3250万9千円 |
第2位 | 2↑ | 宮崎県都農町 | 79億1481万9千円 |
第3位 | 3↓ | 宮崎県都城市 | 74億7422万0千円 |
第4位 | New! | 佐賀県みやき町 | 72億2354万2千円 |
第5位 | – | 佐賀県上峰町 | 66億7227万0千円 |
第6位 | New! | 和歌山県湯浅町 | 49億5128万2千円 |
第7位 | New! | 佐賀県唐津市 | 43億8888万0千円 |
第8位 | 2↑ | 北海道根室市 | 39億7334万6千円 |
第9位 | New! | 高知県奈半利町 | 39億0563万9千円 |
第10位 | New! | 静岡県藤枝市 | 37億0814万8千円 |
2017年は大阪府泉佐野市が魅力的な返礼品で圧倒的な寄附金額を集めました。また、この年に上位になった10自治体のほとんどが、現在も多くの寄附金額を集める人気自治体となりました。
2018年:ふるさと納税受け入れ寄附金額TOP10
順位 | 昨年比較 | 自治体名 | 受け入れ寄附金額 |
第1位 | – | 大阪府泉佐野市 | 497億5290万6千円 |
第2位 | New! | 静岡県小山町 | 250億6297万2千円 |
第3位 | New! | 和歌山県高野町 | 196億3706万7千円 |
第4位 | – | 佐賀県みやき町 | 168億3383万5千円 |
第5位 | 3↓ | 宮崎県都農町 | 96億2697万7千円 |
第6位 | 3↓ | 宮崎県都城市 | 95億6234万9千円 |
第7位 | New! | 大阪府熊取町 | 76億4042万7千円 |
第8位 | New! | 茨城県境町 | 60億8253万7千円 |
第9位 | New! | 北海道森町 | 59億0885万2千円 |
第10位 | 5↓ | 佐賀県上峰町 | 53億1776万5千円 |
2018年はAmazonギフト券やHIS旅行券など、金券類を返礼品として用意した自治体が大きく受け入れ寄附金額を増やし、TOP10入りを果たした年となりました。なお、金券類を返礼品として用意することは、2019年6月の制度改正により明確に禁止となり、現在では返礼品として金券はありません。
2019年:ふるさと納税受け入れ寄附金額TOP10
順位 | 昨年比較 | 自治体名 | 受け入れ寄附金額 |
第1位 | – | 大阪府泉佐野市 | 184億9691万7千円 |
第2位 | 4↑ | 宮崎県都城市 | 106億4534万0千円 |
第3位 | New! | 北海道紋別市 | 77億3769万4千円 |
第4位 | New! | 北海道白糠町 | 67億3338万9千円 |
第5位 | New! | 北海道根室市 | 65億8910万6千円 |
第6位 | 1↓ | 宮崎県都農町 | 52億0833万8千円 |
第7位 | 3↑ | 佐賀県上峰町 | 46億7214万4千円 |
第8位 | New! | 鹿児島県南さつま市 | 46億4419万9千円 |
第9位 | New! | 山形県寒河江市 | 44億2340万9千円 |
第10位 | 5↓ | 新潟県燕市 | 42億3720万2千円 |
2019年6月の「返礼品は調達割合3割以下、地場産品に限る」というルールの厳格化によりふるさと納税の情勢は大きく変化しました。僅かな期間ですが、Amazonギフト券を注目点として押し出した泉佐野市が1位を獲得した以外は、海鮮類のラインナップが豊富な北海道、肉類を中心に魅力的な返礼品が多い九州がランキングをほぼ独占する結果となりました。
また、ふるさと納税の寄付先の多様化が進み、上位10位の自治体が受入金額全体に占める割合は大きく低下しました。
まとめ:総受入金額から見る人気自治体ランキング(2008年-2018年)
順位 | 自治体名 | 受け入れ寄附金額 |
第1位 | 大阪府泉佐野市 | 184億9691万7千円 |
第2位 | 宮崎県都城市 | 106億4534万0千円 |
第3位 | 北海道紋別市 | 77億3769万4千円 |
第4位 | 北海道白糠町 | 67億3338万9千円 |
第5位 | 北海道根室市 | 65億8910万6千円 |
第6位 | 宮崎県都農町 | 52億0833万8千円 |
第7位 | 佐賀県上峰町 | 46億7214万4千円 |
第8位 | 鹿児島県南さつま市 | 46億4419万9千円 |
第9位 | 山形県寒河江市 | 44億2340万9千円 |
第10位 | 新潟県燕市 | 42億3720万2千円 |
ふるさと納税が開始された2008年から各自治体の受入金額が公表されている最新の2019年データまでを元に、ふるさと納税の累計の受け入れ寄附金額のランキングを作成したら以上のようになりました。
大阪府泉佐野市を除くと、ウニやイクラを中心とした海産物に強みを持つ北海道の自治体、牛肉や豚肉に強みを持つ九州の自治体がランキングをほぼ独占する結果となりました。一方、さくらんぼなどのフルーツが人気の山形県寒河江市、家電のラインナップが非常に豊富で人気のある新潟県燕市が新規にランクインする結果となりました。
ふるさと納税を誰もが当たり前に行う時代に
2020年のデータはまだ発表されていませんが、ふるさと納税を行うことは、もはや定番になりつつあり、更に多くの人にその魅力が広がっています。
ふるさと納税の返礼品に関するルールが厳格化されましたが、それでも消費者にとって大変お得な制度であることは多くの人に認知されており、もはや「ふるさと納税を行うことは当たり前」の時代となりました。
まだふるさと納税をやったことがないという方は、これからより「当たり前」になっていくであろうふるさと納税をこのタイミングで始めてみてはいかがでしょうか?